以前、マッチ会社さん向けに、ある薬品を製造・販売していました。目的は、「マッチの軸が途中で折れず、最後まできれいに燃えること」。今の社員は、おそらく誰も知らないと思います。
使っていたのは、リン酸やアンモニアなどを使った薬品でした。この液に、マッチの木の部分を漬けておくことで、燃え方を調整していたようです。
当時は、「マッチが最後まできれいに燃える」ということが、製品として大事だったのでしょう。今となっては、そんな薬品を作っていたこと自体、少し不思議な感じもします。
アンモニアの強烈さ ― 今思えば危険な現場だった
特にアンモニアは強烈でした。作業中、息ができなくなるような感覚になることもあり、今思えばかなり危険だったと思います。
ただ、当時は今ほど安全意識も高くなく、正直かなり無茶をしていた時代でした。もちろん、それが良かったとは思いません。
ただ、昔の工場というのは、今よりずっと現場の感覚が強く、「とにかくやってみる」という空気があったように思います。
経験と感覚で積み上げられた配合
薬品の配合も、今のようにデータ管理されているというより、経験や感覚で積み上げられていた部分も多かったのではないでしょうか。
ふと思うのは、あのレシピは今どこへ行ったのだろう、ということです。帳面なのか、古いノートなのか、もう処分されてしまったのか。おそらく、今後使われることはない技術だと思います。
消えていく技術と、その積み重ねの上にある今
それでも、そういうものの積み重ねの上に、今の仕事があるのだろうと感じます。
時代が変わると、消えていく技術や材料もあります。マッチそのものが少なくなった今、あの薬品も、一つの時代の記憶なのかもしれません。


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